はじめての飲食店開業。正しい店舗工事の見積書の見方とは

店舗工事見積書は見慣れない専門的用語や数字が非常に多く、はじめて見た人にはその内容を理解するのは非常に難しいのではないでしょうか。
そこで店舗工事の見積書に記載されている内容の見方や内訳明細書の見方ついて解説します。

表紙の見方

店舗工事の見積書の表紙には、一般的に工事名称、工事場所、工事金額、工事期間、支払い条件、作成日、有効期限等が記載されています。ここで注意しなければならないのは以下の2点です。

1)見積の有効期限を確認する
見積には必ず有効期限があります。店舗工事見積の金額は季節による材料費の差や人工の確保具合によって大きく異なるためです。ですので、有効期限が切れてしまった見積は同じ工事内容であっても再度見積を依頼する必要があります。

2)金額が税抜きか税込みか確認する
店舗工事の見積の金額は税抜きで記載されている場合と税込みで記載されている場合があります。普段は小さく感じてしまうような税率ですが、工事金額は非常に高額なものなので十分注意しましょう。

内訳明細書の見方

店舗工事の見積書の内訳明細書には、工事内容によって約20種類の工事名称とその項目の単位、数量、単価、金額が記載されています。ここでは一般的な工事項目の内容を解説します。

1)仮設工事
仮設工事とは、工事を安全に進めるために工事間中に設置する一時的な設備や施設を作る工事を指します。

仮囲いや足場の設置、工事をする際に利用する仮設の電気、水道、トイレなど、工事完了後には撤去するものです。また、建物を傷つけないための養生や塗装が付着しないためのマスキングもこれに含まれます。

2)解体工事
解体工事とは、建物をスケルトン状態に戻し、店を借りる前の状態に戻す、原状回復の工事を指します。

元の物件状態に戻すために、什器の撤去や床の仕上げ材、壁、天井、クロス、間仕切りの撤去・処分を行います。

3)防水工事
防水工事とは、建物内部に水がしみこむのを防ぐ工事のことを指します。
特に飲食店の厨房ではきちんと防水工事をする必要があります。厨房は水をこぼしてしまうことが頻繁に起こりえます。取り付けている厨房器具を全て移動して、防水の修理をしなければならないからです。その間はお店を休業しなければならず、損害は計り知れません。また、下の階の店舗にも被害が及ぶとさらなる損害となりかねません。

4)左官工事
左官工事とは、モルタル、珪藻土、漆喰等を壁や床の仕上げとしてコテで塗ったり、吹付けたり、貼り付けたりする日本の伝統的な工法のことを指します。

建物の保護や耐久性と高める役割と美しい仕上げといった意匠面での役割があります。

5)石工事
石工事とは、石材（コンクリートブロックや擬石含む）の加工や積方によって工作物を築造、または工作物に石材を取り付ける工事を指します。
石積み工事、コンクリートブロック積み工事や補修工事、解体工事などがあります。

6)木製建具工事
木製建具工事とは、木製の建具を取り付ける工事のことを指します。
建具とは、外壁や間仕切りの壁の開口部に取り付けられる設備のことでドアや窓などのことを指します。内装工事の場合はエントランスやトイレ部分に限られるため、それほど大きい金額にはなりません。

7)鋼製建具工事
鋼製建具工事とは、銅製の建具を取り付ける工事のことを指します。
金属製建具と記載される場合もあります。スチール製・アルミ製・ステンレス製の建具やシャッターなどもこれに当たります。防火扉や自動扉を設置する場合は費用は高くなります。

8)木工造作工事
木工造作工事とは、建物内部の仕上げ工事のことを指します。
木製の天井・床板・建具・棚・階段などの木製設備を取り付ける工事のことです。

9)金属工事
金属工事とは、スチール、ステンレス、アルミ、銅、真鍮などを加工してできた金物の取り付けの工事のことを指します。

金物には、主に下地など目に見えない部分で利用する軽鉄工事と仕上げなど表層の部分に利用する化粧金物がある。

10)ガラス工事

ガラス工事とは、店舗のフロントガラスや防犯ガラスの取り付けの工事のことを指します。

板ガラスの加工・取り付けやサッシにガラスを取り付ける工事はガラス工事にあたりますが、サッシそのものの取り付けは建具工事にあたります。ガラスは内装工事の建材の中では非常に単価が高いため、その使用量によって工事全体の見積金額に大きく影響していきます。

11)塗装工事
塗装工事とは、外壁、床、壁、天井、配管、建具など建物内外の仕上げの塗装工事のことを指します。
工場などであらかじめ塗装したものに関してはこれに含まれません。

12)内装仕上げ工事
内装仕上げ工事とは、内装の表層部分の仕上げの工事のことを指します。
壁や天井であればクロス貼り、床であればタイル・タイルカーペット貼りがこの項目にあたります。造作工事は内装仕上げ工事と非常に関連性が高く、その境界線も不明瞭なので、工事見積書の内訳明細をきちんと確認しましょう。また、左官工事や塗装工事は同じ仕上げ工事でも別工事項目として記載されるので注意しましょう。

13)家具工事
家具工事とは、家具を現場にて加工したり、組み立てたりして設置をする工事のことを指します。
自分で購入した家具を加工、取り付けてもらうことで工事見積が安くなる場合もあります。

14)サイン工事
サイン工事とは、いわゆる看板工事のことを指します。
店舗の宣伝・広告のための外看板だけではなく、室内の室名表示や案内表示などもこれにあたります。
サインには主にカッティングシート、切り文字、箱文字があり、後者ほど工事金額が高くなります。

また、外看板用の照明は主に壁面に設置した看板に対して外からスポットライトなどを用いて照らす外照式の看板と内部から蛍光灯やLEDなどの照明器具を用いて光らせる内照式があります。内照式の方が一般的に費用は高くなります。

15)電気設備工事
電気設備工事とは、発電、変電、送配電、構内電気等の設備を設置する工事ことを指します。
電気供給の申請からメーター、照明器具、分電盤、コンセントの設置やそれらの配線の工事までを行います。医院や美容室など、多くの電気を使う業種では必然的にこの工事金額が高くなります。

16)　空調設備工事
空調設備工事とは、いわゆるエアコンの設置の工事のことを指します。

店舗のエアコンでは天カセと呼ばれる天井カセット型エアコンが最も一般的に使われています。天カセはそれ自体の価格も高く、またその設置も非常に大変なため、エアコンを設置する場合は工事費全体の中でも非常に大きな割合を占める場合も多くあります。

17)給排気設備工事
給排気設備工事とは、新鮮な空気の供給と屋内空気の汚染を排出する工事のことを指します。

排気の方法は主に3種類あります。①直接換気扇を設置する方法、②天井にダクトを這わせ、別の場所へ排気する方法、③ダクトを使って屋上まで排気を引き上げる方法です。工事金額は①が最も安いのですが、周囲に住宅やオフィスがある場合には禁止されている場合もあります。そういった指定がある場合が多いのでビルの管理会社にきちんと確認しましょう。

また、居酒屋や焼き肉などの煙や臭いが多く出る飲食店のような業種は工事金額が比較的高くなる傾向にあります。

18)給排水設備工事
給排水設備工事とは、厨房、トイレ、洗面所などの水回りの給水や排水管の工事のことを指します。

飲食店や美容院、その他の水やお湯を多く使う業種は、工事金額が比較的高くなる傾向があります。また、配管の移設や既存利用ができない場合は、床や壁を剥がして工事をしなければならないため、想像以上に費用がかかってしまうこともあります。

19)衛生設備工事
衛生設備工事とは、洗面化粧台、洗面器、手洗い器、大小便器、浴槽などの衛生器具や取り付け工事のことを指します。

ペーパーホルダーやタオル掛け・化粧鏡・手すりなどなどの水回りの小物もこれに含まれます。

20)諸経費
諸経費とは、主に現場管理費と一般管理費に加えて、会社の利益のことを指します。一般的に内装工事費の10%前後になることが多いです。

現場管理費とは、主に現場監督の人件費、福利厚生費、法定福利費のことを指します。現場監督は各専門業者のスケジュールの管理や物件が正しい仕上がりになるよう現場の状況を見ながらコントロールしています。

一般管理費とは、本社経費とも呼ばれ、営業・広告等の間接部門の費用のことを指します。

専門的な用語や数字が多いですが、事前に覚えておけば相見積りをとった時の比較検討にも役立ちますのでチェックしておきましょう。

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